【事業再構築補助金】原油価格・物価高騰等緊急対策枠とは

【事業再構築補助金】原油価格・物価高騰等緊急対策枠とは

第7回公募から新たに原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)という枠組みが追加されています。
この対策枠は、ウクライナ情勢の悪化を受けた世界的な原油価格や物価の上昇の影響を受けて、業績が悪化している企業に対して補助するという枠組みです。
採択率が優遇される可能性が高いため、該当の事業者はこちらの枠を活用したいですね。
今回は、原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)の内容について解説させていただきます。

■概要

原油価格・物価高騰等の予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援。

■補助金額

【従業員数 5 人以下】 100 万円 ~ 1,000 万円
【従業員数6~20 人】 100 万円 ~ 2,000 万円
【従業員数 21~50 人】 100 万円 ~ 3,000 万円
【従業員 51 人~】 100 万円 ~ 4,000 万円

■補助率

中小企業者等 3/4(※1)
中堅企業等 2/3(※2)
(※1)従業員数 5 人以下の場合 500 万円を超える部分、従業員数 6~20 人の場合 1,000 万円を超える部分、従業員数 21 人以上の場合 1,500 万円を超える部分は2/3)
(※2)従業員数 5 人以下の場合 500 万円を超える部分、従業員数 6~20 人の場合 1,000 万円を超える部分、従業員数 21 人以上の場合 1,500 万円を超える部分は1/2)

■要件

1.事業再構築要件
事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。

2.緊急対策要件
足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことにより、2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高(または付加価値額)が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上(付加価値額の場合は15%以上)減少していること。また、コロナによって影響を受けていること

3.認定支援機関要件
事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)

4.付加価値要件
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

売上高減少要件の代わりに緊急対策要件が設定されています。
とはいえ、売上高減少要件とほぼ変わらず、多くの事業者が当てはまると言えるでしょう。
物価上昇の影響を受けている昨今では、売上高の減少よりも付加価値での減少になる可能性が高い可能性もあります
従来の特別枠は補助金額が低い代わりに、補助率や採択率が高いという傾向でした。
しかしながら、第7回公募から追加された緊急対策枠は補助金額も通常枠ほどではないものの、高めに設定されています。
採択率も高めになることが予想されており、おすすめの申請枠です。
要件に当てはまる方は緊急対策枠を積極的に狙うことを弊社ではご提案させていただいております。

原油価格・物価高騰等緊急対策枠となる事業は「中小企業等事業再構築促進事業 中小企業庁P5」の中で紹介されています。

・資源高による影響

・直接的、間接的な輸出入の影響

・海外送金や現地駐在などの諸問題による影響

下記で具体的に解説していきます。

■資源高による影響

ウクライナ情勢の悪化で最も影響があったのは全面的な資源高です。
エネルギー、原油、食糧などの資源・食糧関係の相場は大幅に増加しました。
特に国内で価格上昇が続いている生鮮野菜、生鮮魚介、生鮮果物、電気、ガス、灯油を利用する事業者は対象となるでしょう。
資源高の影響を受けている事業者の場合、下記のような事業再構築が緊急対策枠の補助対象となると考えられます。

・内製化によるコスト低減

・価格の影響が少ない他の事業に転換

・既存事業のIT化

代表的な再構築事例は下記の通りです。

(例:フライ菓子製造販売業)

コロナの影響により実店舗への客足が減少していることに加え、原材料となる小麦粉、油などの価格が高騰する一方、商品単価の値下げが難しく、売上・利益率が減少。既存の加工技術を活かし、新たにドライフルーツの製品を製造する機器を導入。原油価格・物価高騰の影響を受ける体制から脱却し、新たな市場の開拓を図る。

■直接的、間接的な輸出入の影響

ロシアに対して輸出入を行っている事業者で業績に影響が出ている事業者は緊急対策枠の対象となると考えられます。
日本ではロシア産のアルミニウムや銑鉄といった金属類、魚介類、鉱物性燃料、木材などの輸入割合が高いという特徴があります。
また、輸出においては自動車、自動車部品、建設用・鉱山用機械、ゴム製品が主要な品目となります。
こういった商品を直接的・間接的に輸出入されている方は今回の緊急対策枠を利用できる可能性は高いでしょう

下記のようなビジネスモデルが主に原油価格・物価高騰等緊急対策枠の対象となると考えられます。

・ロシアから商品や原材料を輸入→ロシア以外から仕入

・ロシアから商品や原材料を輸入→日本から仕入

・ロシアから商品や原材料を輸入→自社で生産

・国内の自動車部品メーカーがロシア輸出→国内や他国への販路に切り替える

・国内の自動車部品メーカーがロシア輸出→電気自動車部品の製造に切り替える

代表的な事例は下記の通りです。

(例:明太子製造・販売業)
コロナの影響により飲食店向けの販売量が減少していることに加え、原料であるタラの卵はロシア産が多くを占めており、製造量を縮小せざるを得ず、売上が減少。既存の加工技術を活かし、ねり天ぷらや出汁など国内産の水産物を用いた新たな製品を製造する工場を新設。輸出入の影響を受ける体制から脱却するとともに、既存の販売経路に加え、EC販売も駆使し、感染症等の危機に強い事業として事業の展開を図る。

■海外送金や現地駐在などの諸問題による影響

ロシアに駐在員がいるケースやロシアの企業と取引しているケースの場合、ロシアへの依存しない企業体質を構築する場合においても補助対象となります。

下記のようなビジネスモデルが主に原油価格・物価高騰等緊急対策枠の対象となると考えられます。

・ロシア企業との取引ができなくなった→国内や他企業への販路拡大

・ロシア企業との取引ができなくなった→新規事業でロシア依存を減らす・なくす

・現地駐在員を他国へ派遣し、ロシアから他国への販路を広げる

代表的な事例は下記の通りです。

【例:機械部品商社】
コロナの影響により部品の調達に時間を要するなどの影響を受けていることに加え、ロシア企業と取引しているが、金融取引の制約によりロシアからの送金が止まってしまっており、ロシア企業からの代金を回収できない限り、コンテナを引き渡すことができず、売上が立たない厳しい状況。機械商社のノウハウを活かし、機械部品専用のフルフィルメントサービス(倉庫業)を行うためのシステムを構築。サービスの提供にあたっては、非対面での営業活動を徹底するとともに、取扱い商材のラインナップを大幅に増やし顧客層を拡大することでリスク分散を進めるなど、感染症等の危機の影響を最小限に抑えられるよう工夫しつつ、ロシア企業との関係に依存しない収入源の確保に取り組む。

本日は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

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