こんにちは、中小企業診断士の岸本圭祐です。昨日、初めてゴルフの打ちっ放しに連れていってもらいました。普段使っていない筋肉を使ったので、筋肉痛に苦しんでいます。勢いで始めたゴルフですが、一人前になれるように頑張りたいと思います。
さて、飲食店のお客様よりクラウドファンディングのご相談がありました。「クラウドファンディングという言葉は聞いたことがあるけど、具体的な仕組みについては、イマイチよく理解できていない」という声を多くいただきますので、本日はクラウドファンディングの仕組みについて、取り上げます。
■クラウドファンディングとは
クラウドファンディング(以下、CF)とは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、インターネットを通して不特定多数の人たちから支援を募る、新しい資金調達の手法です。無名でも実績がなくても、そして担保や保証人がなくても、プロジェクトが魅力的であれば、世界中から資金を集められる可能性があります。
■CFの三類型
CFは大きく「金融型」「寄付型」「購入型」の3種類に分かれます。
まず、金融型は、企業や不動産などに出資した支援者が配当金や株式などを受け取ります。金融商品取引法に従って運営されるリスクのある金融商品の一種です。
次に、寄付型は、出資に対する経済的な見返りはなく、文字通り寄付を募るものです。日本でCFサイトが活発化したのが、東日本大震災のあった2011年で、被災者支援のためのCFが多くたちあげられたため、CF=寄付というイメージを持っている方も多いかもしれません。
最後の購入型の特徴は、資金を提供した支援者に「リターン」と呼ばれる見返りを必ず渡すことです。リターンは品物やサービス、権利などです。例えば、「ウイスキー樽の木材とステンレスを組み合わせた珍しい時計を作りたい」というアイデアを持った人がいたとします。しかし、手元に資金はなく、融資元も見つからない場合、CFを活用して資金を集め、支援者にはリターンとして商品化した時計を渡すなどが一例です。こちらの購入型が最近では、最もポピュラーでしょうか。
■CFの手続きについて
CFで資金調達するには、どんな手続きが必要か。ここでは、購入型の具体的な流れを見ていきましょう。
1. プロジェクトの立案
資金調達の目的は個人的な理由で構いませんが、多くの人の「共感」を得られるかどうかが重要です。例えば、「ネイルサロンを開きたい」人に内装費、「地元でお祭りを開きたい」人に開催費、「老舗レストランを継続したい」人には運営費など、使途は限定されません。
2.サイト選び
現在、CFサイトは世界に1250以上、日本に200以上あります。それぞれのサイトには「地域・地方応援型が多い」「社会貢献型が多い」といったような特徴がありますので、プロジェクトに合ったサイト選びが肝心です。
3.プロジェクトの投稿
プロジェクトの内容とCFサイトが決まったら、タイトル、目標金額、開始時期、リターンなどを書いた企画書を投稿します。CFサイトに掲載するのは無料ですが、プロジェクトが成立した場合、日本では調達金額の8~20%、米国では5~9%手数料がかかります。成立しなかった場合、一切お金はかかりませんから、CFは金銭的にはほぼノーリスクといえます。
4.審査
企画の実行可能性、信頼性が審査され1週間ほどで結果が出ます。
5.プロジェクトの作成
プロジェクトが通ったら、キュレーターと呼ばれるCFサイトの担当者や外部アドバイザーと協議しながら掲載するプロジェクト内容の精度を上げていきます。
6.プロジェクト公開
いよいよCFサイトにプロジェクトが公開されます。
7.情報の拡散とフォローアップ
掲載期間中は、SNSなどを活用して、自分でプロジェクト情報を拡散していかなければいけません。一般的に目標金額の30%以上は自分の知人から集めることが必要とされています。スタート時に知人からの支援があれば、それに続いて支援してくれる人も増えていきます。また、定期的に活動報告をアップすることも大切です。
8.プロジェクト成立
成立した場合、日本のCFサイトでは1週間から1か月後に、米国では2~14日後に入金されます。
9.実行とリターンの送付
資金が入ったら、確実にプロジェクトを実行しなければなりません。そして、支援者に約束したリターンを送付し、CFは終了します。
■CF活用の真のメリットとは
CFは、「ファンディング」という言葉からややもすると、資金調達の側面に目が行きがちです。実際に融資を断られた事業者様から次なる資金調達の手段としてCFの活用をご相談いただくことも少なくありません。しかし、私が考えるCF活用の真のメリットとは、以下の二つです。
①プロモーション活動、メディア露出
プロモーションの一環として、新製品の発売前や新店舗の出店前にCFをワンクッション挟むという試みをすることで、事前に販促活動を行うことができ、見込み顧客の開拓や自社のファンづくりに活かせます。また、透明性の高いCFを活用し、多くの支援者が集まることで、信用やブランド力が高まります。さらに、CFで話題になった商品やサービスはメディアや企業も注目しています。最近のニュースメディアでは、CFをテーマとして扱うことも多いため、新聞社等の各メディアに対して戦略的にプロモーション活動ができます。
②テストマーケティング
既に開発決定した商品や発売前の試作段階の商品でプロジェクトを起案し、どういったユーザーが反応を示すかといった調査ができます。調査結果を生産計画に活かすことで、見込み違いの大量生産による在庫リスクを最小限に抑えることが可能です。また、ユーザーの反応が芳しくない場合、「撤退」という合理的な経営判断も下すことができます。
個人的な見解ですが、CFは販促活動や認知度向上等の補足的手段として活用されることが中小企業経営にとってはベターであると考えます。やはり設備投資であったり、新規事業に対するまとまった金額の資金調達は、融資等で行うことが最善と考えます。最近では信用金庫をはじめとした金融機関もCFサイトとの提携に続々と乗り出しています。過去に融資を断られた場合でも、CFでプロジェクトが成功すれば、その信頼・実績を元に事業性評価の観点から融資を検討してもらえる金融機関も増えつつあります。
なお、私事で大変恐縮ですが、CF活用による中小企業支援の取り組みについて、ミラサポ平成30年度専門家派遣事例に京都府の成果事例として掲載いただいています(3ページ目)。CF活用のご参考になれば幸いです。
今回は以上です。この内容が皆さまのお役に立てれば幸いです。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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