こんにちは、中小企業診断士の岸本圭祐です。
前回のブログでは、事業計画書に必要な経営戦略の2つの視点について取りあげました。今回は、経営者が事業計画書をまとめて「失敗する」典型的な例、失敗しがちな事業計画書の例について取り上げさせていただきます。ここで云う「失敗する」とは、「資金調達がうまくいかない」ということです。資金調達面からの失敗とお考えください。
■「私ならできる!」過去の成功体験中心型
失敗する事業計画書の典型的なタイプに、自慢話が中心の事業計画書があります。特に、創業からの経歴が長かったり、自分一代で事業を育ててきた経営者の事業計画書に多く見られます。例えば、自身が飛び込み営業を重ねた経験や訪問販売で成果を上げたことなど、今の時代とは環境が異なっている時代の成功例を自慢するケースです。実際には、ライバル企業が出てきたり、流行が変わったりして、少しづつ経営を取り巻く環境が変わってきます。過去の成功体験にとらわれて、経営者は実際のところどう乗り切ったらよいのかがまったくわかってない場合もあります。金融機関も、そのことは事業計画書を見ればすぐにわかります。事業計画書が、社長の経歴書になってしまっているのです。過去の成功体験を事業計画書に活かすとすれば、現在でも通用する体験でなくてはいけません。それが社長だけのスキルやノウハウになっているのではなく、従業員に共有されていることがポイントです。スキルやノウハウが企業全体の強みとして共有され、今後の事業計画のなかで成長のポイントになっていれば、金融機関を納得させることができるでしょう。
■「何でもやります!」とにかくがんばる型
失敗する事業計画書のタイプのひとつが、「とにかくがんばる型」です。とにかくがんばる型の特徴は、具体的な取り組みが入っておらず、がんばるとか努力するとか、精神論が中心になっていることです。例えば、飲食店を例にあげますと、いくらがんばるとか努力するといっても、お客に来店してもらわなければ売上は上がりません。がんばれとか、気合いを入れれば売上が上がるということはありません。お客を呼び込むためには、仕掛けが必要なのです。がんばるとは、単に労働時間が長いとか、大きな声を出すとか、早く出社するとか遅く帰るとかではなく、どのようにしたら売上が上がるのか、なぜ売上が変わらないかを頭の中でずっと考えることです。考えるというがんばりを形にしたものが、事業計画書でなければなりません。
■「このままだと大変です!」SOS型
経営者が書いて失敗する事業計画書のなかに、SOS型のものもよく目にします。SOS型とは「このままだと大変なことになる」と、自社の危機的状況の説明が中心になっている事業計画書です。書き方は丁寧でも、見方を変えると「お金を貸してもらえないと大変なことになる」と脅迫しているような文章になっています。それでは、自分の会社の状況が悪いことを金融機関に押しつけていると受け取られても仕方ありません。SOS型の事業計画書に説得力をつけるためには、この危機的状況からどのように脱出するかをしっかりと記述する必要があります。根本的な業績悪化の原因を押さえ、その改善計画が書かれていないことには、金融機関はお金を貸してくれません。
■「いくつかのシミュレーションがあります!」景気次第型
景気次第型の事業計画書とは、過去の実績や今後の売上予測がすべて景気の動向やその景気のなりゆきによるとしている事業計画書です。景気は経営に大きな影響を与えるものですが、経営者は景気の状況を見ながらも、会社を維持向上させていく必要があります。それなのに契機と連動した予測のみでは、経営を他人事のように考えており、経営者としては失格とみなされてしまいます。このような経営者がまとめる事業計画書の特徴に、新聞やシンクタンクなどが発表したマクロ経済の部分にページを割き、政治の批判にまで論点を広げ、自社の経営についての内容が薄くなっている点があります。
今回は以上です。この内容が皆さまのお役に立てれば幸いです。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ