【新規事業を始める際の事業計画書の留意点】~既存事業の説明も忘れずに~

【新規事業を始める際の事業計画書の留意点】~既存事業の説明も忘れずに~

こんにちは、中小企業診断士の岸本圭祐です。

今回のブログは、新規事業を始める際の事業計画には「既存事業の内容も盛り込みましょう!」というお話です。これは融資の際の事業計画書だけでなく、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などに代表される補助金申請の際にも同様のことが言えます。それは何故でしょうか?

■なぜ既存事業の説明が必要なのか?

 融資を受けるための事業計画書を作成する場合、創業時と創業時以外があります。創業時以外の場合とは、既存企業が新規事業を展開するケースです。既存企業の場合は、創業時の事業計画書の内容に加えて、既存事業についてもページを割いて説明する必要があります。  

 新規事業への取り組みのために融資を受けるのに、「どうして既存事業についても説明しないといけないのだろう」と思う人もいるでしょうが、これは絶対にはずせない部分です。

 お金を融資する金融機関の最大のポイントは、「融資したお金が返済されるかどうか」です。では、返済されるお金は、どこから生みだされるのでしょうか?それは、既存事業と新規事業の両方からです。  

 ただし、新規事業にはまだ本格的に取り組んでいないでしょうから、予測どおりに利益が生み出されるかどうかを考えると不安が残ります。予測のブレ幅は大きいと見られます。一方、既存事業はすでに営んでいる事業ですから、今後の予測に関してブレ幅は小さいと見られます。新規事業を展開する初期の段階では、新規事業単体として十分に利益を生み出すことは困難でしょうし、予測の段階から赤字の場合もあります。そうなると、融資したお金の返済は既存事業が生み出した利益から支払われることになります。

 つまり、新規事業に関する事業資金であっても初期の段階では返済の原資は既存事業から生み出されますから、既存事業に関する情報も重要になるのです。

  さらに、極端な話をすると新規事業が競争に負けて早々に撤退を余儀なくされる場合も考えられます。 その場合、新規事業分として融資を受けたお金であっても、既存事業から返済しなくてはならないのです。  事業計画書作成の観点からは、既存事業に関しては安定的に利益を生み出しているという前提で、新規事業に取り組むというストーリーが求められます。もし、既存事業の経営上の課題を明確にしたうえで、課題解決への取り組みのひとつとして新規事業展開があるという書き方をする必要があります。  

 ポイントは「既存事業と新規事業のシナジー(相乗効果)」です。既存事業の業績が悪化している状態で、シナジーを生み出させない新規事業では融資は受けられないのです。

■一般企業の新規事業では商談状況表も用意する

 新規事業といっても、今まで引き合いがなかったものを新規事業にするのは考えにくいものです。おそらく事業として立ち上げる前から、すでに商談を行っていたはずです。  

 そこで、その商談を利用して説得力をつけていきます。まず、既存の商談を一覧表にして、商談状況表を作ります。「本格的に事業を立ち上げていないにもかかわらず、すでにこれだけの商談が発生しているのだから、本格的に売り出したら、さらに売上の向上が見込めるはずだ」という流れでまとめていきます。事業立ち上げからの売上予測については、営業担当者の投入人数や顧客リストからの成約率などを根拠にして立てます。すでに売り込み対象となる顧客名簿があれば、そこからテレアポの成功率、さらに面談の成功率、見込み客になる確率、受注確立といった流れで絞り込んでいき、そのリストから最終成約率を計算します。

■いきなり5年先ではなく、1年ごとに

 自分で考えたことを自分で検証するのは、実は難しいことです。ただ、これには、やり方のコツがあります。いきなり5年先を見通すのではなく、1年ごとにみていくという方法です。

 たとえば、5年後に売上が今の5倍になる予測を立てたとします。そうすると、2年後には現時点の2倍になり、3年後には現時点の3倍になり、4年後に現時点の4倍になっていれば、5年後の予測も現実味を帯びてきます。もし、年度ごとの成長が現実的ではないとしたら、5年後の姿も現実的ではありません。その場合は、成長予測のどの部分に無理があるかを検証し、5年後のあるべき姿から現実味のある計画に修正していくことが大切なのです。

 今回は以上です。この内容が皆さまのお役に立てれば幸いです。

岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

コメントを残す