プロパー融資獲得のコツ

プロパー融資獲得のコツ

 信用保証協会を挟まずに金融機関から貸し出しを受ける「プロパー融資」は、保証付きの融資「信用保証協会付き融資(マル保融資)」と比べて金利負担が軽くなることが多いため、多くの経営者は可能な限り保証なしの貸し出しを受けたいと考えています。

 プロパー融資を受けるコツは、①マル保融資とプロパー融資を併用してから交渉する②担保を入れることで無担保融資を引き出す③短期融資(特にボーナス資金)から交渉するの3点です。銀行の事情や銀行員心理を理解しながら、最大限にプロパー融資を獲得するコツをご紹介させていただきます。

➀マル保融資とプロパー融資の併用

まず背景として、中小企業庁は金融機関に対し、マル保融資を実行する際はプロパー融資の併用を推進するように数年前から求めています。信用保証協会の保証数が増えると未回収の危険性が高まるため、そのリスクをある程度は金融機関に負担してもらうというのがその狙いです。

ここ数年の併用割合の実績を見ると、確実に二つの融資の併用は増えています。ある程度時間がかかるという予想もありましたが、予想以上のスピードで浸透していることになります。

また、地元の主要な金融機関の併用割合を押さえておくとより効果的です。経営者が金融機関の担当者と交渉する際、例えば「御行の」併用割合は51%なんですよね」と話をすると、プロパー融資も含めた融資として検討せざるを得なくなります。金融機関ごとの併用割合の確認方法は、まず金融庁ホームページの「金融機関情報」で地元の金融機関を把握し、次に中小企業庁のホームページの「金融機関別の保証実績」からその金融機関の実績値をダウンロードします。

なお、併用割合の状況は今後も公表されていくことが予想されます。そうなると金融機関としてはある程度の実績を出さなければならず、マル保融資実行時のプロパー融資との併用はまだ増えていくと考えられます。

②担保提供が無担保融資獲得の秘訣

経営者が金融機関からお金を借りる際、一般的に「できるだけ無担保にしたい」と考えます。不動産に

ただ有利な融資を引き出すには、やはり担保を提供することが有利になることが多いことを認識しておきましょう。実際問題として、金融機関から上限なく無担保で借り続けられる企業はごくごく一部であり、多くの中小企業は担保がないと不利になりがちです。

例えばA社は無担保で2,500万円を金融機関から借りているとします。一方B社は、7,500万円の借り入れがありますが、その内5,000万円は不動産担保でカバーされているため、無担保融資は2,500万円です。A社とB社の業績に差はないものとします。このようなA社とB社から、同時に3,000万円の新たな無担保融資の申し込みがあった場合、貸す側としてはどちらを選ぶでしょうか。

金融機関はこうした場合、B社に貸します。担保の提供はその金融機関がメイン行であることの証です。また、万が一返せなくなれば資産を差し出すという覚悟の表れでもあります。そのため無担保部分の額は同じでも、B社を支援したいと考えるのです。すなわち、不動産担保を入れるからこそ、無担保融資を拡大させることができるのです。そもそも不動産を担保に入れるからといって、所有権が即金融機関に移転するわけではありません。

③ボーナス資金・納税資金での借入

 経営者は自社のことであっても、「1年先がどうなるかさえ読めない時代に、5年後や10年後なんて分かるはずない」といったように、将来的にどのような状態になるか分かりません。金融機関もいくら精緻な事業計画を見せられたとしても、簡単には貸せないということが分かるはずです。

 数百万円を5年間で返すというのであれば、融資してもらえる確率はあります。しかし金額や借入期間がこれ以上に多いと、融資を受けるのは難しくなります。すなわち、無担保融資を獲得したいのであれば、まずは短期融資から交渉すべきです。

 短期融資は1年以内に返済するものなので、設備資金には向きません。最も適しているのがボーナス資金や納税資金です。

ボーナス資金は年2回社員に支給するものですから、半年以内に全額返済が求められます。つまり、元利金を6回に分けての返済となりますから、金融機関にとって回収リスクが小さくなります。先々のことは見通せないと言っても、融資申込みの際に直近の試算表の業績を確認すれば、半年程度なら業績を予測することは可能です。

  そのため中小企業は無担保でのプロパー融資を受ける第一歩として、短期融資でボーナス資金の申し込みから入るのが王道です。短期融資のボーナス資金での借り入れと返済の実績を作ってから、長期でのプロパー融資を申し込むことが、より多くのプロパー融資を獲得するコツです。

岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

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