中小企業に経営戦略は必要なのでしょうか?
特に手間やコストをかけて、わざわざ経営計画を策定する必要はあるのか?というご質問を受ける機会があります。
当然、このご質問の裏には、経営戦略や経営計画は必要だろうとの漠然とした思いがあり、しかし、経営戦略とは何をする事なのか判然としない。また、その手間やコストに見合うリターンを得ることが出来るのかどうかが分からないので、中々第一歩を踏み出せないとの思いがある。
と私は推察しています。
そこで、この思いにお答えすべく、小さな会社が勝つために経営戦略等を策定する方法或いはその考え方を今回ご紹介させていただきます。
端的に申し上げて、「道具は使い方で要否や適否が決まる」と考えています。
そもそも「道具」というのは、その使い方次第で、要否や適否が判然としてくるものです。
例えば、はさみは紙を切断するために必要な道具ですが、穴を掘るための道具としては適しません。
これは経営戦略や経営計画にも同じことが言えます。
つまり、これらの経営戦略等は経営の道具であって、その道具の使い方や目的が定まっていない状態で、中小企業に経営戦略は必要かどうか。を議論しても意味はなく、従業員が少ない会社でも、完全下請けの会社で親会社の意向に売上が左右される会社でも、その使い方が正しければ有用な道具になりますし、誤った使い方をすれば無用の長物ということになります。
上記例にも挙げましたが、親会社の意向に売上が左右される会社が経営戦略や経営計画を策定した場合、下請けに特化したポジションを志向するのか、脱専任下請けとして売上を他社に求めるのか、という大きな経営方針を策定することが考えられます。
前者を選択した場合には、親会社のボーダーレスな生産方針を見極めつつ、国内でなければ生産できない高い技術力が必要な部品に特化して下請けするために、研究費用や人員、時間コストを集中していく戦略、計画が考えられます。
また、後者を選択した場合には、他社に営業するための戦略を策定し、そのための人員や時間コストを配分していく計画を策定することが考えられます。
経営戦略や経営計画という経営の道具を使って、会社の方向性を固めることができれば、3年から5年の中期経営計画を策定します。
このときに大事なことは、計画的な赤字、覚悟の赤字を私共は妨げないということです。
例えば、今年は親会社の生産計画が厳しい状況だが、来年は新商品Aの販売が決まっており、部品の納入が見込める。そこで、今年は我慢の1年間と位置付けて、500万円の赤字になるシミュレーションとなっているが、経費の削減に努めて、これを最小化し、来年のために力を蓄えよう。
このような経営判断に基づいた有意な赤字であれば、資金繰りに破綻がない限りにおいては、経営判断として認められる範疇だと考えています。
ところが、戦略や計画があいまいな場合、毎年、毎年の決算結果だけが判断基準の全てになるので、赤字だった、黒字だったと過剰な反応をすることとなり、無用なコストや無為なリスクを負って、短期的に黒字にできる場当たり的な行動だけを選択する事態に成りかねません。
黒字化できる道筋の中で赤字を想定し、その赤字を乗り越えることができる資金繰りを確保したら、腹に力を入れて、赤字になっても揺るがない覚悟もって突き進めば、過剰な反応をして、あわてるようなことにはならないのです。
小さな会社は小回りが利くことが最大の強みです。
大胆に、或いは繊細に環境の変化に対応する者が最も強く、単一的に強いものは環境の変化に対応できず、どこかの時点で負けてしまうことは、教訓やことわざに明らかです。
小さくても勝つのは、中期のスパンで環境の変化に対応し、小粒でもぴりりと辛い会社です。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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