前回に続き「強いブランド」づくりについて取り上げます。事業規模が小さくても「強いブランド」づくりに成功した会社にはある共通点があります。それは、「他社のまねをしていない」ということです。
第二のアップルになろう、第二のスターバックスになろう。これではブランドづくりはうまくいきません。2番手を目指した時点で、「強いブランド」づくりは失敗します。なぜ、2番手では駄目なのでしょうか。
次の文の○○を埋めてみてください。
Q 日本で一番目に高い山は○○である。
Q 日本で一番目に大きい湖は○○である。
おそらくほとんどの人は簡単に埋められたと思います。
全国の消費者1000人を対象にした調査でも、正解率は次のようになりました。
一番目に高い山=富士山・・・99.4%
一番目に大きい湖=琵琶湖・・・95.0%
では、2番目はどうでしょうか。
2番目に高い山=北岳・・・14.3%
2番目に大きい湖=霞ヶ浦・・・23.4%
1番目と2番目の正解率の差は顕著です。つまり、2番手はイメージが浮かばず、人々の記憶に残りにくいのです。ブランドも同じです。1番手を後追いしても、多くの人の心を捉える「強いブランド」にはなり得ません。とはいえ、これからブランドづくりを始める会社が既存のカテゴリー(分野)でナンバーワンになるのは容易なことではありません。
では、どうするか。既存の大きなカテゴリーで勝負するのではなく、特定のカテゴリーでトップになることです。
カテゴリーの決め方には、いくつかの方法があります。
その一つがあるカテゴリーを切り取り、自社が一番手になれる新カテゴリーを生み出すことです。「アメーラ」というトマトブランドで説明しましょう。アメーラは、静岡県を中心とした農家が集まり、つくり上げた高糖度トマトのブランドです。トマトといえば、日本には誰もが知っている「カゴメ」というビッグブランドがあります。巨人のカゴメに対抗し、地方の農家集団がつくった新しいブランドでトップを奪取するのは、誰が考えても難しいとわかります。そこで、トマト市場全体のトップではなく、「高糖度トマト」というカテゴリーを切り取り、トップを目指すことにしました。
その戦略は見事に成功し、東京の市場では「アメーラが高糖度トマトの基準」といわれるほどのトップ
ブランドにこの十数年で成長しました。
消費者が個性化し、マーケットが多様化する今、特定のカテゴリーなら、規模の小さな会社でもナンバーワンになることは可能なのです。
もしアメーラが第二のカゴメになろうと考えていたら、ブランドづくりは失敗していたかもしれません。
カゴメのブランド・ステートメント(企業理念を文章化したもの)は、「自然を、おいしく、楽しく。」です。カゴメ・ブランドは、とても親しみやすく、価格も手頃で人気があります。
一方、アメーラ・ブランドが志向するのは、カゴメとは対極にあるプレミアムトマト、グルメトマトです。カゴメが大衆的、経済的なら、アメーラはおしゃれ、高級感。つまり、「既存のビッグブランドの逆方向を行く」という逆張りの発想です。
「みんながやっているから、自分も」は、ブランドづくりでは最も危険な考えです。小さな会社が「強いブランドづくり」に成功するためには、他社のものまねではなく、独自の土俵をつくり、そこでチャレンジしていくことが大切です。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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