成熟社会の今、モノづくりのレベルは上がり、品質のよい商品を提供する会社は山ほどあります。ですので、単に「よいモノ」というだけでは、消費者は「買いたい気持ち」になりません。どうしたら消費者は、「買いたい」と思ってくれるのでしょうか。それには、モノを超えた「何か」を創造し、消費者に提供することが不可欠になってきています。それが、「強いブランド」づくりです。今回は中小企業のブランドづくりについて取り上げたいと思います。
結論から申し上げますと、最も「強いブランド」が消費者に選ばれやすいです。
これは紛れもない事実です。
全国の消費者1000人を対象に行った次のような調査があります。
『品質も価格も全く同じで、パッケージに「松坂牛」「静岡和牛」と書かれた二つの牛肉があった場合、どちらを選びますか?』。
結果は次の通りです。
松坂牛・・・72.9%、どちらでもよい・・・23.4%、静岡和牛・・・3.7%
この結果からわかるのは、品質や値段は全く同じでも、「選ばれる商品」と「選ばれない商品」があるということです。
では、静岡和牛の品質が松坂牛より優れているとしたら、どうでしょうか。これは実際の話ですが、伝統のある「和牛品評会」で、松坂牛、近江牛、神戸牛などそうそうたる銘柄産地の和牛が出品された中で、静岡和牛は最優秀賞を受賞しました。
しかし、その品評会の直後に行われた競りで最高価格を付けたのは、静岡和牛ではなく、松坂牛だったのです。これが「強いブランド」の力です。最高品質は、必ずしも最高価格を意味しません。最高価格を付けるのは、松坂牛のような最も「強いブランド」です。
松坂牛が消費者に選ばれたのは、静岡和牛より知名度が高かったからと思われた方もいるかもしれません。もちろん消費者に認知されることは「強いブランド」づくりの前提ですが、知名度だけでは「強いブランド」は作れません。
例えば、「京都」と「埼玉」。知名度からいえば、どちらも知らない人はいない地名だと思います。しかし、どちらに旅行したいかと聞かれれば、大半の人は「京都」と答えるでしょう。
この差は、すぐに明確なイメージが浮かぶかどうかです。京都といえば多くの人が歴史ある町並みや伝統的な体験を思い浮かべることができます。
同じように「松坂牛」と聞けば、「霜降りの柔らかい肉」を誰もがすぐにイメージがつきます。つまり、明確なイメージが浮かばなければ、人々に選ばれないということです。選ばれる「強いブランド」は、この「明確なイメージ」を必ず持っています。
自社の商品を「どんなイメージ」で売りたいのか?売る側が明確なイメージをもつことが「強いブランド」づくりの第一歩なのです。
実は今の時代、「強いブランド」づくりは大企業よりも規模の小さな会社の方が有利です。モノが不足していた時代、人々は充足を求めるため、「平均的」なモノを求めました。大量生産・大量消費の時代です。しかし、今求められているのは、そうしたどこででも手に入るような平均的なモノではなく、特定の地域や場所でしか手に入らない「個性的」なモノです。
「総合」「全国」「平均」が求められる時代は大企業が有利でした。しかし、今の消費者が求めているモノは、「専門」「地域」「個性」でこれらは全て中小企業の得意とする分野です。 規模の小さな会社にとって、「強いブランド」づくりをするための追い風が今まさに吹いているのです。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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