会社の現状を月単位で報告してくる中小企業はほとんどいないため、定期的な報告を続けるだけで、「とてもしっかりした将来性のある会社」と思ってもらえます。
「業績予想」とは、まず自社が行わなければ誰も行ってくれません。「将来性」も自らアピールしなくては、誰も見出してくれません。その2つがうまくアピールできれば、金融機関は高く評価してくれるのです。
■情報提供量と融資の成功確率は比例する
金融機関による融資判断の際に大きくモノを言うのは、なんといっても「決算書」です。
しかし、節税のために、できるだけ利益の少ない決算書を作成している中小・零細企業も少なくないでしょう。
そんな企業が決算書だけで判断されると、融資は厳しくなります。
ところが実際には、他のいろいろな資料を提供することで、融資を認可されている企業が数多くあります。
「いろいろな資料」とは、「予想損益計算書」、「資金繰り表」「見積書」「契約書」などです。
金融機関の融資担当者は、基本的に顧客に感情移入する傾向があるので、できることなら融資を実行したいと考えています。
依頼された融資案件に否定的なスタンスで接する担当者は、一部の例外を除いてほとんどいないでしょう。
しかし、どんなに腕のよい料理人も食材がなければ料理することができないのと同じように、融資担当も少ない資料からでは融資に有用な情報を引き出すことができません。
逆に言えば、材料さえあれば、資料を自ら解釈して、その解釈を正当化する論理を展開して、顧客に有利な結果が出やすい稟議書を作成することは可能です。
たとえ悪材料でも、ないよりはずっといい。
材料さえあれば、そして量が多ければ多いほど、融資担当 はそれらをうまく組み合わせて、稟議書にあなたの企業の豊かな将来性を描くことができるのです。
■決算書に載らない情報が融資を決める
現在はパッとしなくても将来大化けする会社はよくありますし、そういった大きく育ちそうな企業を発掘するのも金融機関の社会的役割のひとつです。
しかしながら、決算書等の財務諸表には将来性を表す項目はほとんどありません。
「この企業には将来性があるかもしれない」というネタを担当者が見つけ出すのは、決算書ではなく企業から提出された各種資料、その企業への訪問など自分で行う調査、または支店に訪問してくれた社長や役員等からヒアリングした内容からです。
チェックする項目は、たとえば「人事教育」「新商品・新サービスとその評判」「新規取引先」「従業員のモチベーション」「現在取り組んでいる経営改革」「財務以外の自社の強み」など。
いずれも決算書に載っていないので金融機関に伝わりにくいのが実情ですが、いったん伝わったら、稟議書はがぜん書きやすくなります。
ゼロよりもひとつ、ひとつよりも2つ、情報を積み重ねていくことで融資がおりる可能性はどんどん高まります。
■資料を求められても怒らず、むしろ喜ぶ
融資を依頼すると、かならず「あの資料ください」「この資料ください」と求められます。
稟議書の作成に必要だと分かってはいても、出す側として面倒なのは、「あの資料」と「この資料」を金融機関が一度にまとめて言わないこと。
今日、ある資料を出して、その次の日は別の資料を頼まれて、そのまた翌日はまたまた別の資料の提出を要求されるのはよくある話です。
でも、ここで怒ってはいけません。なぜなら資料請求は、融資担当者が融資を実現しようと願う気持の表われだからです。
融資実行に積極的でなければ、最初にもらった資料だけで稟議書を書いて上司に提出すればよいのです。
そこで「この内容では融資は認可できない」と上司や審査部署に言われて否認されれば、その旨を融資依頼先に伝えて業務終了です。
担当者が資料を要求するのは、何としてでも有利な材料を見つけ出し、依頼された融資を許可してもらえるようにしたいから。
または融資担当役席から「認可するにはこんな資料が必要だ」と言われるから。少なくとも顧客に嫌がらせをするためではありません。
もちろん担当者も一度に依頼すればよいのですが、一つ目の資料を見て別の資料があったほうが説得力が増すと考え、次の資料を見たことで、じゃあもっと他の資料があれば…と思いつくのです。
担当者がとくに優秀ならすべての必要資料を予想して一度に依頼できるでしょうけれど、そこまでハイレベルな担当者は残念ながらそう多くはありません。
しかし、融資先に対する愛情はあるため、怒鳴られても嫌がられても次から次へと資料を頼んでくるのです。
こんな時は「一度に言え」と怒るのではなく、「私の融資のために頑張ってくれているのだ」と愛情を持って見守り、快く提出に応じてください。
担当者は、よりいっそう頑張ることができます。
なお、要求から提出までの期間は3営業日以内が望ましいのですが、いつまでに必要かこちらから尋ねると好印象です。
依頼する担当者は今日、明日にでもと思っているのですが、そこまではっきりとは言いづらいため、「できるだけ早めに…」と曖昧に言葉を濁しがちです。
早めにもらえれば早めに審査できるのは当然として、融資担当役席や支店長が研修や長期出張などで不在となるような場合、その人たちが戻ってくるまで、稟議書の決済は遅れてしまいます。
そのようなケースでは、依頼した融資の実行日も後ろにずれてしまいます。
こちらから期限を尋ねることでそんなリスクも回避できますし、何より担当者の心の負担が軽くなって、ますますあなたの会社のために気持ちよく動いてくれるでしょう。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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