金融機関を選ぶ際に一番大切なのは、窮地に陥ったときに助けてくれるかどうかということです。
大手金融機関と地域金融機関、その両方のメリットとデメリットを押さえた上で、つき合う金融機関を「メインバンク」として選定しなければ、中小企業はもはや生き残ってはいけません。
「なんとなく」ではなく、各金融機関のメリット、デメリットを十分把握した上で、主体的、積極的につき合う金融機関を選ぶ必要があります。今回は積極的につき合うべき金融機関について取り上げます。
■融資量が一番大きいのがメインバンクではない
中小企業の経営者から、「メインバンクに裏切られた」というセリフがよく聞かれます。担当者から頼まれて投資信託を購入したり、各種キャンペーンに協力したにもかかわらず必要な時に融資を断られた、という話です。
金融機関の渉外担当者には、預金や融資のほか、投資信託や生命保険・損害保険などさまざまなノルマがあります。それらが顧客ニーズに合致してすぐに売れればいいのですが、そううまくいきません。
そこで自分の懇意にしている企業(自社のことをメインバンクと思っている企業)に対して「お願い」をします。「うちがメイン取引なんですから協力してくださいよ」という言葉を添えて。
しかし、そこで協力しても、その場で感謝されるだけで実際の融資に有利に働くことはありません。投資信託や保険などは担当者レベルで動く話に過ぎず、あなたの協力は上層部まで届かないからです。
さらに、中小企業が思うほど、金融機関は「メインバンクである」という自分の立場を気にしていないのが実情です。経営者の多くは「融資量が一番多い金融機関がメインバンクである」と思っていますが、それは大きな間違いです。
困ったときに応援してくれるかどうか、リスクを負ってくれるかどうか、それがメインバンクの条件です。それに当てはまらない金融機関なら、今後の取引を見直すべきでしょう。
■融資額を増やすのに欠かせない複数の金融機関との取引
多くの中小企業はひとつの金融機関に依存しがちです。
しかし、2つ以上の金融機関との取引を強くお勧めします。
企業の売上が1社に依存していたら、危険だと感じるでしょう。金融機関とのつき合いも同じ形でリスクヘッジするのです。
リスクとは、支店長や担当者の異動、積極的融資方針から消極的融資方針へといった本部の方針変更などです。たとえば、メイン取引をしている支店に新たな支店長が赴任して融資方針が厳しくなったり、優秀な前任担当者から能力が著しく劣る新担当者に代わって融資の許可がとれなくなったりします。
自社に何ら責任のない金融機関側の事情で資金繰りを左右されないために、ぜひ複数の金融機関と取引をしておくべきです。
■中小企業を大切にしてくれる地域金融機関
第二地銀、信用金庫、信用組合などの地域金融機関は、メガバンクや地方銀行に比べると、貸し渋りや貸しはがしにスピーディーに踏み切れません。
地域密着型で市場が狭いので、「○○銀行は貸し渋りしているらしい」「□□信用金庫の取り立てが厳しくなったようだ」という噂が流れれば、日々の営業活動に 支障をきたすからです。また、顧客との接触頻度が多いためしがらみもあり、業績が悪いからといって地元企業をビジネスライクに切り捨てることができないのです。
年商5億円未満の企業は、最低でも1行の地域金融機関とつきあっておくべきです。なぜなら、年商5億円以下の企業に対してメガバンクはまともに相手をしてくれないし、同じような理由で地方銀行も年商5億円未満の企業は重点先(とくに取引を重要視する相手)として見てくれないことが多いからです。
他方、地域金融機関にとっては(もちろん金融機関の規模にもよりますが)、年商5億円規模の企業は貴重な大口取引先です。中小企業にとって、メガバンクより地域金融機関が大切な存在であることはご理解いただけると思います。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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