「昔に比べて、金融機関がお金を貸してくれなくなった」と聞くことが少なくありません。 自助努力を行わない、いざとなれば金融機関を駆け込み寺にしようと考えている企業に対して、金融機関は支援しようとは考えません。
一方、金融機関に自社をPRすれば、融資は受けられるという事実もあります。そう言われても、「なぜそんな面倒なことをしなくちゃならないんだ」と感じる方もいるでしょう。
なぜ金融機関に対して自社をPRしなければならないか、今回は、その理由について考えてみましょう。
■自社をPRしなければならない理由①-金融機関が忙しくなりすぎた-
「銀行員はラクな仕事だ、融資の申し込みをロクに検討せず突き返すだけなんだから。だいたいうちにもすっかり顔を見せなくなった。何をやってるんだか」と感じている方もいるかもしれませんが、彼らも今、大変な時代に突入しています。
多くの業界と同様に、店舗統合やリストラで人員が大幅に削減されたからです。
仮にひとつの店舗に300件の顧客があり、顧客担当が3人いるとすれば、一人当たりの担当は100件。店舗統合で3つの店舗が合併すると、顧客数は3倍の900件ですが、担当者は6人ほどに削減されます。
結果、一人当たりの担当顧客数は150件、つまり1.5倍です。その上、リストラの実施により、顧客担当が削減されるのはよくある話です。6人から4人になるとすると、一人当たりの担当顧客数は225件、当初に比べれば2.5倍に膨れあがっています。
そうなると削減されやすいのは、顧客フォローのための時間です。訪問回数が減るか、回数が減らなくても滞在時間が減ります。そのため、「資料を提出していただけなければ、残念ながらこの融資は取り扱えません」とあくまでも丁寧に、しっかりきっぱりと言われることも少なくありません。
■自社をPRしなければならない理由②-金融機関の情報収集能力の低下-
昔は、どの金融機関も融資にたいへん積極的でした。今と違って投資信託も保険も扱っていませんでしたから、融資で得る利息が収益の源泉だったのです。融資案件をできるだけ多くみつけられることが、優秀な行員の証でした。他行に先駆けるために、また顧客に対して融資のイニシアティブを取るためには、融資ニーズをいち早くつかむことがカギになります。必然的に融資案件に対するアンテナが高くなり、情報収集能力が高まります。
しかし、バブルがはじけてから、金融機関は融資に消極的になりました。以前なら融資案件を見つけたら基本的に実行の方向で行われていた審査も、バブル後は「断る」というスタンスへ。これでは行員の情報収集力も磨かれません。
行員の情報収集力低下にさらに追い打ちをかけたのが「ビジネスローン」という商品です。2005年ぐらいから景気が上向き、金融機関が再び積極的に融資できるようになって発売された「ビジネスローン」は、3期分の決算書をコンピューターに入力するだけで融資可能金額と金利、貸出し期間が自動的に算出されるシステムです。市場にはありがたい融資商品でしたが、行員の情報収集能力が育つことはありませんでした。
■自社をPRしましょう
上述のとおり、行員が忙しくなりすぎたことや、行員の情報収集能力の低下は残念ですが心配はいりません。
金融機関へ定期的に足を運んで現状を説明したり、決算書以外の書類を提出するなどして、こちらから情報発信すれば良いのです。大きな会社だから融資が受けやすいわけではなく、小さな会社でも、しっかりPRすることで、多額の融資をひきだしているところは数限りなくあります。
金融機関は、本音を言えば融資をしたいと考えているはずです。担当者だって、会社の方針より何より人情として、よほど嫌いでない限り自分の顧客の融資案件は積極的に実行したいと考えています。
だからこそ、自社のよい部分を存分に表現できる資料を別途用意すべきなのです。
■「つながり」(=人間関係)が融資を左右する
情報を提供してPRすることには、もうひとつのメリットがあります。それは、金融機関との人間関係を作りやすいということです。
よく金融機関の支店長はこう言います。「人間性のわかっている、つきあいの深い社長をなかなか無下にはできない。少々条件が悪くても、『えーい、いってしまえ』と融資OKの印鑑を押すことはすくなくない」と。これは、金融機関が「顧客とのつながり」を重視するからです。
金融機関といえども、相手は人間です。人間だからこそ、「つながり」ができれば、「何とかこの企業を支援したい」と前向きに努力してくれます。
では、どうやって「つながり」を作るか?
定期的に金融機関に足を運び、会社の内容や現在の状況をPRすることで、「つながり」を作ることができるのです。
必要なものは企業内容・経営状況を示す資料、それをPRしに行く真摯な姿勢の2つだけです。
みなさんはきっと「PRできるほどの材料はない、ないから資金繰りに窮しているんだ」とお思いでしょう。
しかしあなたが「たいして有効ではない」と考えている材料は、別の角度から光を当てると「少し有効」「かなり有効」かもしれません。とにもかくにも材料がゼロだと、手も足も出せないのが金融機関。
しかし逆に、材料さえあれば、いかようにも料理するのも金融機関です。だからこそ融資申込みを受けた担当者は、「融資しやすい」という材料探しに奔走します。その奔走の手間を省き、融資担当に気持ちよくスムーズに稟議書を書いてもらうために、あなたの日常からの定期的なPRが大きくものを言うのです。
岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ
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