第6原則「時中を見極めよ」

第6原則「時中を見極めよ」

「時中」とは、中国の古典「易経」において非常に重んじられる言葉の一つです。

時中という言葉を分解すると、「時」という文字と中心の「中」です

これは「時に中(あた)る」、つまり「その時にぴったりの」という意味です。

この「時」というのは第4原則の「変化を味方とせよ」に関係し、その時々のタイミングです。

注意すべき点として、多くの方は「中」とは、「偏らずにバランスが取れている」とか「真ん中」というように勘違いします。

しかし、易経でいう「中」とは、右端と左端の中間となる真ん中のことではありません。

また、Aさんの意見とBさんの意見の中間でお互いに妥協して問題解決をしていく折衷案という意味でもありません。

お互いに妥協しなければならない問題解決の方法は真の問題解決にはならず、双方に不満が残ります。

「中」とは、Aさんの意見とBさんの意見が対立した時、問題解決をするためにもっと高い次元での解決策を打ちだすことです。

易経では、その時にぴったりの解決策のことを「時中」といいます。

中心点ということをもう少し違った観点で見てみます。

扇子(せんす)を思い浮かべてみてください。

扇子はパッと開きます。

手元のところには、その交点になる場所に要(かなめ)があります。

そこに小さな力を加えるだけでパッと扇が開きます。

小さな力で大きくパッと物事を、局面を動かせる。

こういう要の部分を押さえる。これが時中でもあります。

イメージがとても大事です。

扇の要になるところがその時、その時の時中です。

季節で例えると、春には種を蒔くことが春の時の解決策、秋に収穫し刈り入れすることが秋の解決策です。時中です。

冬の雪と氷に終われた大地に種を蒔くのは問題を起こすことで、冬の時中ではありません。

つまり、時中とは、その時にぴったりのことをするということです。

時中でなければ、中途挫折し、問題が発生します。

冬には冬の時中(養生) を、春には春の時中(種蒔き)を、夏には夏の時中(育成)を、秋には秋の時中(収穫)ををすることによって、結果が得られます。

養、殖、育、産のサイクルです。

是非これを意識して、社長ならばご自身の経営に活かす。我々コンサルタントならば、社長のメンタルや会社の状況を見極める場合など、あらゆる局面で、この冬、春、夏、秋の季節の循環理論を活用できます。

第4原則にある変化を味方にするというのは、その時、その時の時中を見極めることから導かれる原則なのです。

最後に一つ大事なことを付け加えておきます。

この循環に関して、「兆し」という言葉があります。

兆し、つまり「サイン」。

冬の養生も春の種蒔きも、突然春が来たと思って慌てて種蒔きの準備をしても遅いです。

夏の育成も事前に一歩手前の段階で、事前に十分な準備があるから、いざとなったら育成ができます。

秋の収穫も事前に収穫の道具、収穫の準備をしておくから収穫がスムーズにいきます。

その時になって慌てても遅いのです。

これを会社経営にあてはめると、従業員が最近、行動が遅いとか、ミスが多いとか、報連相のレベルが下がっている、初歩的なミスが多いなど。

見えにくいところに兆しがあります。

なかなか表に出ないので見過ごしやすい。でもそれを小さな僅かな変化から、「あ、うちの会社は少し冬が近づいているな」と思って手を打つ必要があります。

だから、社長こそ会社の小さな変化で、この後、冬が来る、不況が来る、まずい状況が来る前の最初のサインを見逃さず、小さいサインのうちに時中(その時にぴったりの解決策)を打つ。これがとても大事です。

(2022/10/04加筆)

人間関係の時中 – 中小企業診断士 岸本圭祐のブログ (kspartners.co.jp)

(2022/12/01加筆)

営業の時中 – 中小企業診断士 岸本圭祐のブログ (kspartners.co.jp)

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

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