貸してもらえる格付け、もらえない格付け

貸してもらえる格付け、もらえない格付け

こんにちは、中小企業診断士の岸本圭祐です。

金融機関は年に2回、金融庁の金融検査マニュアルに基づいて取引先の格付けを行っており、この格付けを「債務者区分」、格付けを行う作業を「自己査定」と呼んでいます。  

格付け区分は、「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5つで、実際には「要注意先」については、「要管理先以外の要注意先」と「要管理先」の2つに分かれています。

この格付けにより、「問題なく融資できる」「融資せずに推移を見守る」「回収を重視する」の3つに顧客企業は振り分けられます。

 今回は、融資を受けるための基礎知識とも言うべき「格付け」についてお伝えします。

■ほぼ問題なく貸してもらえる「正常先」

 金融機関では、まず問題なく融資できる格付け区分を「正常先」と呼んでいます。

金融検査マニュアルでは「業績が良好で、財務内容に問題がない優良な貸付先」とされていて、具体的には「業績が良好」=黒字、「財務的にも問題がない」=債務超過ではない、ということです。

また、多少赤字となっていても毎月の返済が滞りなく、日々の業務も順調なら正常先と判断されることが多いようです。

正常先と判断されれば、通常必要な運転資金ならほぼ融資がおります。

だからこそ正常先と評価してもらえることが安定的な資金調達のために必要不可欠です。

■借りるために少しテクニックが必要な「要管理先以外の要注意先」

金融機関が何とか融資できる格付け区分は「正常先」とこの「要管理先以外の要注意先」です。

しかし、この要管理先以外の要注意先と判断されると、借りるために多少の努力が必要となります。

金融検査マニ ュアルは、要管理先以外の要注意先を「貸出条件に問題がある、債務の履行状況に問題がある、業況が低調ないし不安定な債務者、財務内容に問題があるなど、今後の管理に注意が必要な貸付先」としています。

要管理先以外の要注意先に入ると、基本的に金融機関の融資態度は消極化します。「要管理先以外の要注意先=不良債権予備軍」と考えられてしまうため、予想される被害を拡大しないように審査も辛めになってしまうのです。

正常先には聞かないことも、要管理先以外の要注意先に対しては尋ね、金融機関(融資担当)の不安を少しでも減らすための資料を短期間に大量に請求してきます

■なかなか借りられない「要管理先」

金融検査マニュアルによると「要管理先」とは、「要注意先のうち、債務の履行を3カ月以上延滞、または貸出条件の緩和を受けた貸付先」のことで、文字通り3ヶ月以上返済が滞っている企業や返済額減額、貸出金利減免など貸出条件を変更している企業のことです。  

要管理先には、金融機関は融資を行いません。しかし、ごく稀に金融機関の思惑が絡んだ、「金融機関の立場を守りながらの融資」ならおりることがあります

では、「金融機関の立場を守る」とはどういうことでしょうか。

まず、顧客が要管理先と判断されると、金融機関が積むべき貸倒引当金が増加します。

この貸倒引当金は自己資本から差し引かれるので、積めば積むほど金融機関の自己資本比率は悪くなり、融資できる総額は減ります。

貸せる総額が減れば、貸し渋りせざるを得ない状況になるのはおわかりでしょう。

これは金融機関にとっても痛いことなので、できれば顧客の格付けは下げたくない。

何度も繰り返しますが、金融機関は基本的には「貸したい」のです。

しかし、要管理先には貸せないので、要管理先から管理先以外の要注意先、あるいは正常先へと格付けを上げる(ここが「金融機関の立場を守る」部分です)説得力の高い材料があれば、なんとか実行に向けて努力します。

経営状況を一発逆転できるような材料があれば、それを証明できる資料と熱意で金融機関の姿勢を変えることもできます

■取立てを受ける「破綻懸念先」以下

リスケも行わず6ヶ月以上遅延すると、有無を言わさず「破綻懸念先」として分類されます。

「実質破綻先」「破綻先」含む「破綻懸念先」以下になると金融機関にとって完全に不良債権扱いとなり、「回収不能」というレッテルが貼られてしまうのです。

こうなると金融機関は、融資した額の一部でもいいからどうにか回収しようとします

例えば、担保不動産を競売にかける、担保を解約するなどして返済に強制的に回したり、保証人に代位弁済(代わりに支払ってもらうこと)を求めたりします

破綻懸念先に限って「要管理先」に格付けを上げるための救済手段が用意されています。

破綻懸念先とは、「経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、再建計画の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きい貸付先」のことです。

 「再生計画の進捗状況が芳しくない」とありますが、たいていの破綻懸念先は再生計画など立てていないでしょう。

貴社がもし破綻懸念先とされているなら、まず、この再生計画(経営改善計画ともいう)をきちんと立ててください

その内容を金融機関が認めれば、破綻懸念先が要管理先にアップする望みが出てきます。

今までは「3年以内に」正常化が見込まれる計画の立案が求められていましたが、現在は「5~10年で」という比較的長期の計画でも認められるよう金融庁から指導が出ています。

なお、「実質破綻先」、「破綻先」についてはほぼ復活の見込みがないとされ、格付けアップのための救済手段は用意されていません。

本日は以上です。この内容が皆さまのお役に立てれば幸いです。

岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

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