昨年12月に事業再構築補助金の令和4年度第二次補正予算の概要が関する資料が中小企業庁より公表されました。
中小企業等事業再構築促進事業(令和4年度補正予算額5,800億円)として予算計上されており、こちらが事業再構築補助金の予算となります。つまり、本年度以降も事業再構築補助金は継続されます。
以下に簡単にポイントを解説させていただきます。
■今年1回目の事業再構築補助金の公募(第9回公募)は、令和5年1月中下旬予定です。第9回公募の応募締切は3月下旬、採択発表は調整中とのことです。
注意点として、第8回公募の採択発表は第9回公募の応募締め切り後に予定されており、第8回公募で申請される場合、第9回公募での申請はできません。
■今後の事業再構築補助金の公募スケジュールとして、令和5年度末までに3回程度の公募の実施が予定されています。
■成長枠(旧通常枠)の創設
成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に対する支援です。必須要件が見直され、売上高減少要件が撤廃されました。
まず必須要件(全枠共通)として、下記のA、Bを満たす必要があります。
A:事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
B補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加
加えて、成長枠の対象となる事業者については下記の要件が求められます。
①取り組む事業が過去~今後のいずれか10 年間で、 市場規模が10% 以上拡大する業種・業態に属していること
なお、対象となる業種・業態は、事務局で指定されるようです。公募開始時に事務局 HP で公開予定とのことです。また、指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出し、認められた場合には、対象となり得ます。 過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として
公表されるようです。
②事業終了後3~5 年で給与支給総額を年率平均 2% 以上増加 させること
■グリーン成長枠の拡充
グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者への支援が継続されます。要件が緩和された類型(エントリー)が創設され、使い勝手が向上しました。
■大幅賃上げ・規模拡大へのインセンティブ
成長枠又はグリーン成長枠に申請する事業者に対し、上乗せ枠として、卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠を設け、成長・賃上げのインセンティブが付与されます(両上乗せ枠の併用は不可)。大幅な賃上げを行う場合、成長枠・グリーン成長枠の補助率が引き上げられます。
■産業構造転換枠の創設
国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、補助率を引き上げる等により重点的に支援されます。対象経費に廃業費が追加され、 廃業費がある場合は補助上限額が上乗せ(廃業費を最大2,000万円上乗せ)されます。
産業構造転換枠の対象となる事業者は、必須要件(B については、 付加価値額の年率平均 3.0% 以上増加 を求める。)に加え、以下のいずれかを満たすことが求められます。
①過去~今後のいずれか10 年間で、市場規模が 10%以上縮小する業種・業態に属していること
②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10% 以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高10%以上 を占めること
①については、 業界団体が要件を満たすことについて示した場合、その業種・業態を指定業種として指定されます。( 3月上旬受付開始予定。)又は、コロナ後~今後の10 年間で市場規模が 10 %以上縮小することについて、応募時に客観的な統計等で示していただき、事務局の審査で認められた場合にも対象となります。過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として公表されます。
②については、要件を満たす地域であることについて、自治体が資料を作成し、証明する必要があります。( 3 月上旬受付開始予定。)公募開始時に指定された地域が公表されます。
■サプライチェーン強靭化枠の創設
海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に取り組む事業者製造業を対象として「サプライチェーン強靱化枠」を新設し、 補助上限額を最大5 億円まで引き上げて支援されます。
サプライチェーン強靱化枠の対象となる事業者必須要件(B については 付加価値額の年率平均 5.0 %以上増加 を求める。)に加え、以下の要件を満たす、 製造拠点を国内回帰 する事業であることが求められます。
- 取引先から国内での増産要請 があること
- 取り組む事業が 、過去~今後のいずれか 10 年間で、 市場規模が10% 以上拡大する業種・業態に属していること
対象となる業種・業態は、事務局で指定されます。公募開始時に事務局 HP で公開予定とのことです。指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出し、認められた場合には対象となり得ます。
③以下の賃金引き上げ等要件をいずれも満たしていること。
・交付決定時点で、 設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上 高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上高くなる雇用計画を示すこと。
・事業終了後3~5年で給与支給総額を平均2%以上増加 させること。
制度の詳細は 検討中とのことです。
■業況が厳しい事業者への支援
コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者に対して、支援が継続されます。第9回公募までの、回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合し、新たに「物価高騰対
策・回復再生応援枠」として措置されました。
個人的には、売上高減少要件さえ満たせば、こちらの枠が比較的活用しやすいであろうと感じています。
■一部申請類型における複数回採択
事業再構築補助金では、原則として、 1 事業者につき採択は 1 回に限っているが、グリーン成長枠については、過去に採択された事業者であっても、再度申請し採択されることを可能としています。これに加え、 産業構造転換枠及びサプライチェーン強靱化枠についても、一定の条件下で過去採択された事業者の再申請・採択が認められます 。ただし、 産業構造転換枠・サプライチェーン強靱化枠は、 1 回目の採択額(交付決定を受けている場合は交付決定額又は確定額)との差額分が補助上限とされます。なお、支援を受けることができる回数は 2 回が上限 です。
■社会福祉法人の補助対象範囲拡大
ものづくり補助金と同様に、「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」の一環として、介護事業の生産性向上を支援するため、社会福祉法人においては、公的保険制度の範囲外で行う事業を収益事業とみなすこととし、補助対象となる法人の範囲が拡大されました。
■事前着手承認制度の対象期間及び対象類型の見直し
交付決定前に事業に着手できる、事前着手承認制度について、対象期間を令和 4 年
度第二次補正予算の成立日である2022 年12月2日以降に見直されます。
また、本制度を活用できる事業類型が最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠、サプライチェーン強靱化枠に限定されます。
細かい部分は他にも沢山ありますが、簡単なポイントを記載させて頂きました。
以上となります。
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