融資審査には一定のルール(金融検査マニュアル)が存在しますので、銀行員はそれに従って決算書をチェックしていきますが、最終的には会社が滞りなくスムーズに貸した資金を返済してくれるかどうかを判断していきますので、どちらかというと途中の経過的なP/Lよりも資金繰りの状況が読み取れるB/Sを重要視しています。
■B/S編
1.債務超過になっている場合。(純資産がマイナスになっていること)
※但し社長借入金は自己資本と見なされます。ここは、会社が設立して以来今までどれだけの利益を上げてきたかの集大成を示す部分です。マイナスであれば金融機関が慎重になるのも当然です。
2.自己資本比率がマイナス或は低い場合。※自己資本÷総資本で算出します。
3.貸付金が多い場合。特に関連会社や社長に対するものが多い場合。
4.仮払金・立替金がある場合。これらの科目は一時的に使用する科目であり、この科目に動きのない金額があれば資産性がないと判断される。
5.ゴルフ会員権やリゾート会員権等で含み損を抱えているものについて、減損処理が正しく処理されていない場合。
6.売掛金が売上規模・同業者に比較して多い場合。
※売掛債権回転期間が長く(3ヶ月以上)なっていないかをチェック。不良債権・万一架空売掛金等が混入されていれば長期化する。こういうものがあれば決算書に計上されていても銀行は自己資本から差引きして実態で審査します。
7.棚卸資産が売上規模・同業者に比較して多い場合。
※在庫回転期間が長く(3ヶ月以上)なっていないかをチェック。陳腐化・不良在庫の有無を確認しあれば自己資本から差引きして実態で審査します。
8.税金の滞納をしている場合。
※特に源泉税は従業員から預かったもの。貸しても返してもらえないのではと判断される。
9.借入金が月商の何倍か。一般的に償還年数が約10年を超えていると追加融資は懸念されます。
10. 借入金の中に高利貸しから融資を受けているものがある場合。
11. 融通手形を発行している場合。
12. 売上規模・業種から判断しても現金勘定に異常な金額が計上されている場合。
■ P/L編
1.「返済原資」があるかどうかをチェック。これは税引後利益が返済額以上であるかどうかということです。一般的には減価償却費を加算した金額のことを言います。
2.2期連続赤字の場合。但し、創業赤字とか、新規事業の展開等で説明できる事由があり一時的・一過性であれば問題はなし。また、社長の役員報酬を多額にとっている場合の赤字も考慮される。
3.営業利益・経常利益は黒字か。営業利益は営業外損益及び特別損益を加減算する前の本来の営業上で稼いだ利益が表示される部分。経常利益は特別損益を加減算する前の経常的な利益が表示される部分でいずれにしても臨時的に発生する特別損益を加減算する前の利益であり、この部分がマイナスであれば収益力が備わっていないとみられる。
※ただし、将来性など総合的に融資は判断されるので赤字だから即ダメということではありません。
4.減価償却費を正しく計上していない場合。決算書の見栄えをよくして利益を計上したいがために減価償却費の計上を拒む方がおられますがそれは逆効果です。金融機関はお見通しです。逆に銀行員の手間を煩わせ信頼性のない決算書だとみなされてしまいます。
5.売上について、得意先は安定しており、1社だけに集中していないか。
6.接待交際費が度を超えている場合。公私混同していないか経営管理に問題あるのではないかとの疑いが生じます。
■ その他
1.申告書の署名欄に税理士の署名押印がない場合。
2.決算書に添付する科目内訳書の明細が大雑把な場合。
3.毎月の試算表がスピーディに出てこない。
4.決算書を2期比較で出してくれない。
5.資金繰り表の作成ができていない。
6.社長の計数観念がない。銀行員からの質問にしどろもどろになる。
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