「きちんとした人間性」をアピールして融資額を増やす

「きちんとした人間性」をアピールして融資額を増やす

金融機関は、「きちんと返してくれる」ところには融資したいと思っています。

では、彼らが「きちんと返してくれる」と判断する基準はどこにあるのでしょうか。

多くの金融機関の支店長・担当者は、「新たに融資取引を始める顧客に対してどこを重視するか」という問いに対して、そのポイントとして「人間性」をあげます。

今回は、融資に影響を与える経営者の人間性にフォーカスします。

■金融機関が融資したくなる人、ならない人

人間性とは、具体的に言えば、「借りたものは必ず返す」という信念を持っている人か、「都合が悪くなったら逃げそう」な人かということです。

言い換えると、困難があったときに「積極的に立ち向かうタイプ」と「逃げようとするタイプ」です。

 「積極的に立ち向かう」社長は、仮に返済が滞りそうになっても「金融機関の返済だけは何としても行わなければ」と考える人が多いため、「できる限り協力したい」と金融機関に思わせる顧客になりやすいのです。

 これと反対なのが、普段から大物然としている社長です。何か問題が起こったとき自分ではなく部下に対処させることが多く、いざというときに本人と連絡がとれなくなったりするのです。

融資の話をしていても自分の都合ばかり主張し、細かい詰めを部下に任せるため、話がなかなか進みません。

その結果、自分の意に沿わない結果になると怒鳴り込んでくるなど、扱いの難しい顧客となりがちなので、「できれば融資したくない」と最初から金融機関から敬遠されることとなります。

大物然としている社長は大抵、初めて話をするときに自分を大きく見せようとします。

いわゆる「はったりをかます」社長です。

はじめに大きなことばかりを言うのは、景気や業界動向などの状況を自分に都合よく解釈した上でのことが多く、金融機関は「リスクマネジメントができていないのでは」と懐疑的になります。

それまで取引がなく、相手の背景もわからない状況で「リスクマネジメントできない」と金融機関側が判断したら、取引につながることはまずあり得ません。

万が一、話が進んで実際に各種資料を精査すると、大風呂敷の中身のほとんどが夢物語だったということはよくある話です。

 融資経験を積んだ担当者は、どういうタイプが困ったお客さんになり得るかわかっているため、自分を大きく見せようと虚勢を張っても得になることはひとつもありません。

■どんぶり社長は融資にダメージを与える

金融機関は、会社の数字と同時に、経営者の数字感覚も見ています。

以前なら社長がどんぶり勘定であろうが、経理担当者がしっかりしていれば何とかなったのですが、現在、どんぶり社長への融資のハードルは高くなっています

景気のよかった頃はたいていどの会社もある程度の利益率を確保できていたため、返済に問題がなければ、社長がどんぶり勘定でも「仕方ない」で済んでいました。

しかし、不況下においては、細かい数字を追いかけなければ利益の捻出が難しくなっています。

社長がどんぶり勘定だと、仕入れ先や販売先との交渉もシビアにならず、経費感覚が鈍ければわずかな利益など瞬く間に飛んでしまいます。  

どこの中小企業でも社長が実質的には営業戦略を立て、先頭に立って行動しているため、社長がどんぶり勘定だと会社の経営に与える影響が大きいと金融機関は熟知しています。

このご時世、どんぶり社長に対して厳しく接しているのは当然です。

 しかし、どんぶり社長がいきなりシビアな社長になるのは難しいでしょう。

せめて社長には、毎月の「売上目標」「売上総利益目標」「営業利益目標」「経常利益目標」「資金繰り」については、金融機関に尋ねられたらすぐ答えられるように癖をつけておくことをお勧めします。

毎日数字を見て意識することによって、どんぶり体質は少しづつ改善されていきます。

■有能な後継者の存在は無条件で有利にはたらく

後継者の有無は金融機関の持つ印象に大きな影響を与えます

各地の商工会議所や中小企業庁など多くの支援機関が行っている「後継者」に関する調査では、後継者不在の事業所と後継者が存在する事業所を比較すると、売上高、利益、企業規模等に大きな差が出ているのです。  

金融機関も当然その事実を把握しているため、後継者が定まっていれば、将来にわたる経営の安定性や返済への安心感アップなど、よい条件として判断します。

後継者の能力が高ければ、今までと違った形での成長が期待できると同時に、現社長なら素直に耳を貸さないアドバイスにも若い後継者が耳を傾けることが多いため、金融機関にとっては好ましい交渉相手として映ります。

金融機関にとって、優秀な後継者の存在はプラスポイントです。

最近よく金融機関が「後継者塾」や「二代目経営者塾」といった後継経営者対象の勉強会を主宰しているのも、背景は同じです。

次世代の経営者を囲むことで他の金融機関に浮気されないようにするのと同時に、向学心のある若手経営者に人脈形成や経営者としての知識を手に入れてもらい、よりよい会社にしてもらうのが目的です。

「まだまだ」とお思いでも、早めに後継者を指名して金融機関と顔合わせをするのがよいでしょう。

岸本が代表を務める→株式会社ケーズパートナーズ

岸本圭祐

㈱ケーズパートナーズ 代表取締役 中小企業の➀資金調達、➁経営計画作成・実行、➂スモールM&Aを支援している。

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